ポスト・コロナの離島振興

全国離島振興協議会専務理事 小島愛之助さん(アイランダー会場、東京池袋)

本来ならば、オリンピック・イヤー

令和2年も半年を過ぎました。今年はオリンピック・イヤーということで、本来ならば、今頃は、多くの外国人が来日して、盛り上がっているはずでありました。しかし、新型コロナウィルス流行の影響で、事態は様変わりとなってしまいました。とりあえず、5月25日に緊急事態宣言が終了したことに伴って、一段落の状況にはなっておりますが、東京都を中心に新規感染者の確認数も再び高水準となっており、予断の許さない状況が続いております。

私はもとより専門家ではありませんので、現在の新規感染確認の状況について、深入りするつもりはありません。しかし、敢えて誤解を恐れずに申し上げるとするならば、現在の状況は当初とは局面が大分異なってきていると思います。第1には、積極的な検査の実施を含めて検査数自体が増えてきていることが挙げられます。第2には、比較的若年層で新規感染の確認が増えてきていることが明確であります。また、そのことと関連して、第3に、無症状や軽症の新規感染確認が大半を占めていることも注視すべきだと思います。

もちろん、無症状や軽症であっても感染力を有していることは巷間に流布しているところでありますし、現実に職場や家庭等において感染の広がりをもたらしていることも報道されているところであります。そして、そのことをもって、第2波到来という懸念が生じていることも否定できません。しかし、現状は、むしろコロナと共存するウィズ・コロナの時代に入ってきているのではないでしょうか。私は、今後しばらく、こういう時期が続かざるを得ないと考えておりますので、皆さん一人一人が自衛の意識を強く持って、新たな生活様式に取り組むことが重要であると強調しておきたいと思います。

ポスト・コロナの時代

さて、ウィズ・コロナの時代がいつまで続くかについてはもちろん定かではありませんが、その後いずれ訪れるはずのポスト・コロナの時代について、課題と希望を含めて、話を進めておくことが肝要であると思います。

まず、離島の生命線ともいえる観光の問題でありますが、訪日外国人旅行者数4000万人を目前にして頓挫してしまったインバウンドについては、しばらくの間は元通りに復活することは難しいと思います。一方で、国内旅行客については、短期滞在の団体旅行には慎重にならざるを得なくなり、家族や友人等比較的少人数で旅行し、周辺地域を含めて長期間滞在することを楽しむことが志向されるのではないでしょうか。

ヨーロッパのバカンス客が好む「暮らすように旅する」スタイルがその極限にあると考えます。実際に、今夏以降の国内旅行の案内を見ていると、少人数、連泊、着地型観光等々の要素を織り交ぜた商品が目立ってきています。こうしたスタイルが日本国内で浸透し、また受け入れ側もそういう需要に対応できるようになってくれば、いずれインバウンドが復活した際に、アジアを中心とした従来の訪日客層とは異なった、ヨーロッパのバカンス客なども多く呼び込めるようになるのではないでしょうか。

離島リモートワーク移住

ところで、人口減少と高齢化に悩む離島市町村にとって、観光等の交流以上に大きな課題が移住・定住の促進であることは間違いありません。実は、これについては、新型コロナウィルスの禍が思わぬ好機をもたらす、ピンチをチャンスに転じる可能性が出てきているようであります。

緊急事態宣言下の東京都では、官庁や企業など多くの職場でリモートワークが実践されました。そして、ほとんどの業務がリモートワークでも十分にパフォーマンスを発揮し、オフィスに通勤することの意味合いすら薄れつつあるような雰囲気が醸成されてきております。現実に、東京都心にあるオフィスを撤退する企業や最早オフィスを持たないという企業も出てきていますし、また、リモートワークを常態とする大企業も散見されるようになっています。

ウィズ・コロナの時代からポスト・コロナの時代にかけて、我々が経験していくことになる「新たな日常」においては、全国津々浦々どこにいても仕事が出来るという生活様式が実現されるようになるといっても過言ではないでしょう。これまで何度となく取り沙汰されながら実現が覚束なかった「東京一極集中是正」も今回は何とか進むのではないか、否、今回こそ進めなければならないと思っているところであります。

これまで、移住促進のネックの1つであったことが「働く場所」でありましたが、リモートワーク移住であれば、仕事を持って移住してくるわけであります。あとは通信環境等の整備ということになりますが、「経済財政運営と改革の基本方針2020」では、デジタルニューディールと称して、「新たな日常」構築の原動力となるデジタル化への集中投資・実装とその環境整備を謳っており、政府も本腰を入れて後押しをしてくれるようであります。

このような、まさに絶好の機会に積極的に動かないことは考えられないと思っております。全国離島振興協議会としても、日本離島センター共々、「離島リモートワーク移住」の促進に向けて、離島市町村にとって必要な情報提供を行うと共に、政策実現に向けた要望活動を行っていきたいと考えておりますので、御指導と御支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

writer :小島愛之助