定年後に漁師で稼ぐことはできるか

小河原健一さん(68)

定置網漁師に聞くと、漁師になりたいと若者が来るがみんな辞めてしまうという。定置網漁の仕事はハードなのだろうか。小漁師(こりょうし)と言われる一本釣り漁師は、一人で漁に出るため、プロじゃないと務まらない。この2つしか、漁師になる選択肢はないのでしょうか。久賀島には、定年後、釣りを楽しみながら、収益をあげ、優雅に生活する人たちがいます。名付けて定年漁師。今日は、どうすれば久賀島で定年漁師になれるかを解説します。

定年後に釣りをナリワイにする生活

久賀島で定年後に釣りを楽しむ小河原健一さん(68)を訪ねた。久賀島生まれ。地元の中学校を卒業後、自衛隊に入隊した。30歳で除隊し、軍艦などの船の配管工事を請け負う会社を起こした。長崎、函館、横須賀、佐世保と全国を回って工事を請け負った。60歳で会社を息子に譲り、今はかあちゃんの実家に住んでいる。かあちゃんは久賀島生まれの同級生。今も長崎市で元気に働いている。一方私は、年金暮らしをしている。釣り三昧の毎日を過ごしているよ。毎日釣りをして食べたり、まわりにあげたりしているよ。釣りは田ノ浦港のまわりだけで、遠くへは行かないよ。釣り道具を集めるのが好き。釣り竿がいいので、大物しかつらないよ。小物は釣らないよ。出航して4時間、4尾程度を釣り上げ、いけすに入れている。この辺りでは天然のマグロの小さいのが採れるよ。10キロくらいのブリも採れるよ。夢は100キロ級の魚を釣ることだな。

釣り道具を集めるのが好きと小河原さん

釣りで1日5000円を稼ぐには

小河原さんは、採った魚を食べたり、みんなにあげたりしていますが、やり方によっては、1日5000円は稼ぐ方法があると取材に同行していただいた森さんが言います。大物に狙いを絞って、4時間で4尾が目標。年金と合わせれば生活できるでしょう。その方法を簡単に説明します。

(1)漁協の準組合員になる

漁協の組合員にならないと魚は売れない。年間の会費は組合員で確か5万円くらい。準組合員はもう少し安い。これで魚を売ることができ、いけすを作ることもできるよ。

(2)放置船を手に入れる

放置船を譲ってもらうと船は手に入る。船外機のないのはつけなくちゃいけない。船外機は10万円くらい。今でも船外機がついている放置船はちゃんと動くよ。放置船とはこれだよ。岡に上がっている船だよ。持ち主知っているから、いつでも案内できるよ。この島の人間なら無料だと思うけど、外からきたらお金払う必要があるかも。ガソリン代は毎月3万円くらいじゃないか。

放置船は喜んで譲ってもらえるはず

(3)イカを売る

いけすの作り方は教えるよ。ミズイカは昼に釣れるよ。夜釣るイカもあるけど、定年漁師は昼釣りだけをまずはやってみるといいですよ。イカは動かないので小さないけすに入れておいても死なないよ。筒の内側に黒ペンキを塗っておくと静かにしている。イカは2ハイで1キロくらい。10ハイで5キロくらいになる。10ハイ(5キロ)がいけすにたまったら出荷する。1キロ1000円で売れる。つまり5000円で売れるのよ。生きているのは生きたまま売る。死んだイカは干す。干すと重さが軽くなっちゃうけど、1キロ、8000円くらいで売れるよ。

(4)久賀島にいる大物ヨコワ

田ノ浦湾周辺では大物が釣れるよ。アオイカ、ミズイカだけじゃなくて、カツオ、真鯛、きびなご、イサキ、ケンサキなどが採れるよ。マグロの小さいのも採れるのよ。この辺りではヨコワ(クロマグロの幼魚)と言っている。マグロは尖閣諸島あたりで産卵する。だから尖閣諸島は大切な場所なんだよ。海流に乗り、ヨコワは五島列島周辺を必ず通過する。海流の逆流はしないよ。対馬や壱岐でもマグロは採れる。和歌山あたりでも採れるよ。そして海流に乗り、小魚を食べ、大きくなり、冬には青森県の大間あたりまで北上するんだよ。ほら、沖合にゆっくり進む一本釣りの船が見えるでしょう。100メートル後ろに赤いウキを引っ張っているのが見えるでしょう。あれは、ヨコワを釣っているんだよ。生きているままだと、田ノ浦湾の対岸にあるマグロの養殖場で高値で買ってくれるよ。あそこにウキが見えるでしょう。あそこ!

田ノ浦港周辺、大物の魚が集まる潮目は近い

(5)氷を手に入れる

出荷には氷が必要だよ。久賀島には製氷施設がないから、奈留島の漁協に取りに行っている。定置網漁師は氷を奈留島まで買いに行っているから分けてもらうといいよ。いつでも紹介するよ。

定置網漁師から氷を分けてもらって出荷する

(6)魚を福江魚市まで運ぶ

定置網漁師の高速艇にエビ養殖業者の荷物も載せて福江魚市に運ぶ

定期船シーガルでも魚は運べる。電話すると漁協が福江港まで取りに来てくれる。

福江魚市(定期船の埠頭から撮影)

福江魚市内部

(7)季節によって採れる魚が違う

イカは1年中採れるよ。カツオやクチは7月、8月。真鯛は11月、12月。きびなご、イサキ、ケンサキは3月、4月に採れるよ。潜りができるとサザエ、アワビ、伊勢海老、タコ、イシダイなども採れる。これらには禁漁期があることは注意してね。これで生活している島の80代のおばあちゃんも若い移住者もいるよ。

(8)世話焼きの地元の人は必要

定年後に漁師で稼ぐ人を定年漁師!と名付けようと思うのだけど森さんどう思います?おお、いいね。ネーミングがうまいね!でも、いきなりは漁師はできないですね。定年漁師になるためには地域の実情に詳しい地元の人の案内が必要ですよね。定年漁師コンシェルジェ。定年漁師になる方法を指南してくれた森さん、森さんのおかげで見えてきました。森さん、定年漁師コンシェルジェをやったらどうですか?ええっ、コンシェルジェ?そんな仕事があるの?

森さん、ありがとうございました。

定年漁師になる方法を教えてくれた森さん

writer : 「久賀島Life」編集長 斉藤俊幸