久賀島に稼ぐ学生拠点が作れないか。

青研ワイン絆(熊本県荒尾市)

いずれは長崎県内で起業してほしい。

先週に続き長崎県立大学の話題です。長崎県立大学は佐世保校とシーボルト校の2つがあります。平成28年4月には地域創造学部ができました。地域創造学部は佐世保校にあります。定員は250人。公共政策学科が120人。実践経済学科が130人の学科です。公共政策学科は、豊かな地域社会の実現のための公共政策を推進できる知識の獲得を目指しています。つまり公務員になりたい人はこの学科で勉強します。また実践経済学科は地域における課題を理解、分析し、経済的な視点から解決策を提案できることを目指しています。これは民間企業に就職を希望する人たちが学ぶのでしょう。いずれにしても地方創生の観点が人材育成に必要な時代です。同大学の卒業生は約30%が県内企業に就職とのことですが、おのずとファイは限られており、70%は県外に出て就職しています。地域創造学部はいずれ起業教育が必要になると思います。一度は都会に出て働いてもいいですが、都会で培った能力や経験を活かし、長崎県に戻り、起業し、地域の屋台骨として活躍してほしいものです。

佐世保港から福江島までは直結していない。

長崎県立大学地域創造学部学部長の綱辰幸教授を訪問しました。五島市の2次離島である久賀島や奈留島での学生の活動を行ってほしいとのお願いをするのが大きな目的です。綱先生に一度、久賀島や奈留島に来ていただき、また学生も連れてきていただき島内をにぎやかにしてほしいです。同大学佐世保校の学生が佐世保校から長崎空港まで行くとなるとバスで1時間半。そこから福江空港まで空路で行き、また福江港から船に乗る。交通費も高いため学生たちはこのルートは選ばないですね。佐世保港から福江港までゆくフェリーは現在運休です。五島列島は上五島と下五島が航路でつながっていないです。佐世保駅から長崎駅までバスで移動し長崎港までは徒歩で歩き、ジェットフォイルに乗るしかないです。福江港に到着して、また久賀島や奈留島に船を乗り継ぐしかできない。日帰りは難しいし、往復の交通費だけで1万円以上の出費が必要です。このため久賀島に大学生を呼ぶのであれば島内に学生が宿泊できる活動拠点が欲しいです。島内の活動費と交通費を捻出する収益力を持ったコミュニティビジネスも必要です。地域で学生が活動する拠点を『まちなか研究室』と言いますが、久賀島には“まちなか”がないので“しまなか”研究室というのでしょうか。

まちなか研究室の歴史

私は大学でまちなか研究室を作ることをお手伝いしてきました。まちなか研究室とは大学と地域の活動拠点で1997年に関西学院大学の片寄俊秀教授(元長崎造船大学教授)が三田市本町商店街に作ったのが始まりです。お酒が好きな片寄先生は大学内の研究室での飲食を控え、このまちなか研究室でお酒を呑みながら地域住民と学生の拠点を作ったのでした。そしてこの動きに俊敏に反応したのが、関東学院大学昌子住江教授でした。2003年に関東学院大学(神奈川県横須賀市)の登下校駅である追浜駅の追浜(おっぱま)商店街に追浜こみゅに亭を作りました。私は03年当時、関東学院大学の講師として昌子教授の下でこのまちなか研究室の設立を手伝いました。

商店街は学びのキャンパス(まちづくり道場:兵庫県三田市本町商店街)

長崎造船大学、関西学院大学の教員を歴任した片寄俊秀先生(まちづくり道場:兵庫県三田市本町商店街)

稼ぐまちなか研究室「追浜こみゅに亭」

横須賀市追浜商店街で問題となったのはまちなか研究室の毎月の家賃15万円をいかにして払うかでした。これが私たちの最大の課題でした。そこで私たちは、当時ワイン製造免許の規制緩和があり、濃縮果汁だけでワインを醸造してよいことに着目し、葡萄畑のない横須賀市の商店街の一室にワイナリーを作ったのでした。まちなか研究室の家賃を払うために商店街の人たちと住民は今もボランティアでワインを仕込んでその稼ぎで研究室を維持しています。それで追浜こみゅに亭は今でも大学生と住民の活動の拠点として続いています。こんな学生の活用拠点を離島で作れないかを今回訪問で提案しました。

学生たちは地域貢献活動を推進(横須賀市追浜商店街)

ボランティアでワインを仕込みその収益でまちなか研究室を運営する。(横須賀市追浜商店街)

小規模醸造設備

最後に、機械屋の私が起業を手伝った超小型の醸造所、蒸溜所を少しだけ紹介します。ワイナリーは100万円くらい、米焼酎は300万円くらいでできます。有人国境離島交付金使えます。いろいろ楽しくできます。この機械をしまなか研究室に準備してはどうでしょうか。この収益で活動資金を得て、学生がやってくる交通費に充当できれば、久賀島はにぎやか。

ワインを仕込む直売所青研(熊本県荒尾市中央商店街)

米焼酎を造るばうむ吉野川蒸溜所(高知県本山町)

クラフトビールを醸造する麦雑穀工房(埼玉県小川町駅前商店街)

writer : 「久賀島Life」編集長 斉藤俊幸