県内離島と地域創造学部

長崎県立大学地域創造学部長綱辰幸先生

「しまなび」プログラム

現在、多くのしまは、島外への人口の流出と、島内における人口の高齢化に悩まされているのが現状です。我が国の経済状況の変化により、石炭、遠洋漁業など、それまで長崎のしまを支えてきた産業の衰退は、商店の閉店など住民の生活に直面することとなりました。その結果、地域における一層の人口減少や高齢化の進展が進み、お祭りなどが維持できないという地域も見られるようになりました。

長崎県立大学では、離島が多い長崎県の特徴をいかし、長崎県内の「しま」を新たなキャンパスとして、「しまなび」プログラムを実施しています。この「しまなび」は、前半講義科目「長崎のしまに学ぶ」(4~8月)と、後半しまでおこなう演習科目「しまのフィールドワーク(4泊5日)」(8~9月)をおこなうといった構成になっています。それぞれ少人数のグループに分かれPBLベースの学習法として授業は運営されています。ここでは、大学で学んだ成果をしまの人材の育成や観光、産業振興等のかたちでしまに還元することを目的としています。しまで地元の食材を使ったお弁当やお土産の開発、離島でのインターンシップなどを提案し、現実にしまの自治体などで採用された学生の提案もあります。そこでは、ただ自分たちがやりたいことだけでなく、「しまにとっての意味」を踏まえてプロジェクトを計画、提案することが求められます。その結果、しまなびプロジェクトに参加することで、多くの学生にとっては、対人能力の改善や、課題発見に有効であるとの結果がみられました。

(出典:長崎県立大学ホームページ)

(出典:長崎県立大学ホームページ)

(出典:長崎県立大学ホームページ)

インターンシップ

また、人口減少を食い止め、その地域の経済や伝統を維持、発展させて行くにはどうすべきかを考えるために2016年に創設されたのが地域創造学部です。地域創造学部では、公共政策学科と実践経済学科の2つの学科を設けました。

地域創造学部の2学科における教育課程の特徴は次の通りです。公共政策学科では、公共の価値を追求する政策立案や評価の知識と技術、調査法・分析法を修得したのち、「公共政策実習」や「公共機関インターンシップ」などにより、行政の現場を中心とした実践的な学習を行っています。具体的に、公共政策実習では、長崎県の要請により、かくれキリシタンの伝統文化をもつ春日集落(平戸市)の課題について調査しました。公共機関インターンシップでは、長崎県北部振興局、平戸市、松浦市や佐々町での約一ヶ月のインターンシップを行っています。また、実践経済学科では、「企業インターンシップ」、「地域企業研究」や「長崎白書実践演習」などを通じて、地域の経済・社会の現場での学習を行っています。企業インターンシップでは、ハウステンボスなどの地元企業で一ヶ月のインターンシップを行います。教室での講義だけでなく、地域・行政・民間企業といった現場での体験・学習を重視している学部です。

地域創造学部のもうひとつの役割は地域への有能な人材の供給です。地域が直面する様々な課題を、専門的、総合的な視野に立って理解、分析を進め、そして他者と協働しながら、実現できる人材を育成することがこの学部の役割です。

地域創造学部公共政策学科では、推薦入試で県内離島高校区分という制度を設けて、長崎県内の離島高校からの学生を積極的に受け入れ、しまに帰ってしまを支える人材を育成できればと考えています。

このように長崎県立大学、地域創造学部は、しまに関心を持ち、しまを支える存在になればと常に考えています。

(出典:長崎県立大学ホームページ)

writer : 綱辰幸