有人国境離島で使える事業制度・解説

「霞が関ダイアログ」会場となった外資系生命保険会社から赤坂方面の夜景。いきなり都会の風景ですみません。

金融知識をうまく活用しビジネスを考える。

久賀島の繁殖農家の畑田さんが34歳で何がすごいかと言えば18歳で牛舎を建て15年間の融資返済を終えたこと。また新しい牛舎を融資を受けて建てたこと。これにより大きな農業が久賀島でもできることを立証したことです。五島市の若い畜産農家が彼を目指しています。金融の役割が地方創生のなかでも注目され始めています。若い人が、自分の人生の中で就職せずに融資を得て自分の夢を実現しています。新しい生き方が全国各地で広がっています。

金融庁のちいきん会が企画した「霞が関ダイアログ」(ダイアログとは対話)に参加しました。国の助成は補助金、交付金から無保証、無担保、無利子といったリスクの少ない金融制度による支援へと動いています。過疎地域や離島では手づくりの特産品開発やカフェなどの小さなサービス業の起業が補助金を使って進められてきましたが、雇用拡大を図るためには、もう少し大きな起業が必要です。それも施設設備をすべて市町村が揃え地元住民にやってもらおうと頼み込むようでは、組織は長続きしません。全国各地に空いている農産加工所がたくさんあるのは、自分事として事業を行う主体がなかったからです。

借金返済期間があるのは若い人たちだけです。銀行は当事者のやる気を見ています。当事者に借金返済という定住に向けた覚悟を求めているのだと思います。借金返済は大変だけど、そのほうが生きるために緊張感がでていいのではと思います。金融知識をうまく活用したビジネスを考えてみませんか。

銀行と地方自治体から200人が集まった。

各省庁の金融事業が出揃ってきた。

「霞が関ダイアログ」当日は、ローカル10,000プロジェクト(総務省)、農業経営の収入保険(農水省)、事業承継(中小企業庁)、ESG地域金融(環境省)、企業版ふるさと納税(内閣府)等の各省庁が行っている金融に関する支援制度の説明が行われました。その後、関心のある制度担当者を囲み制度の運用に関する質疑を行いました。遠藤金融庁長官もやってきました。外資系生命保険会社が会場を無償提供。参加者は200人。半分が銀行、半分が公務員で議論が行われました。有人国境離島で使えるローカル10000プロジェクト(総務省)と企業版ふるさと納税(内閣府)について説明します。

ちいきん会を主宰する金融庁の菅野大志さん

遠藤金融庁長官

各制度担当者との質疑応答(サークルセッション)

無保証、無担保融資のローカル10000プロジェクト(総務省)

ローカル10000プロジェクトとは民間事業者の初期投資に要する経費を支援するもので、施設整備費、機械装置費、備品費が対象です。雇用吸収力が大きい地域密着型の立ち上げを支援します。民間事業者、大学・研究機関等、地域金融機関、地方自治体が新ビジネス立ち上げに活用するものです。公費による交付負担額は国(1/2)と地方自治体(1/2)で最大2500万円。地域金融機関借入金が2500万円以上。この借入金が無担保、無保証であることがポイントです。最大5000万円程度の新事業を行うことができます。

五島市の福江島は有人国境離島交付金で多くの人たちが起業しています。しかし2次離島である久賀島や奈留島ではあまり起業家がいません。ここはローカル10000プロジェクトを活用したソーシャルビジネスの担い手が現れてほしいと思います。

損益参入と税額控除の合計が9割となった企業版ふるさと納税(内閣府)

企業版ふるさと納税は地方創生に新たな資金の流れを生み出すために創設された税制措置です。地方公共団体は地方創生プロジェクトを企画立案し、そのプロジェクトに賛同した企業が寄附をするものです。今まで寄附額の3割が損金算入。税額控除の3割で合計6割が軽減できましたが、今年から税額控除が最大6割となり、9割の税の軽減効果が得られるようになりました。ふるさと納税はこれまで企業の創業の地や工場がある地域、被災地などの自治体に寄付する例が多かったです。企業は地域貢献をアピールできます。企業はぜひご検討ください。

9割の税の軽減効果が得られるようになった。

有人国境離島交付金をうまく組み合わせる。

大きな事業を起業するのであれば、初期投資は国の交付金や融資、企業版ふるさと納税等をうまく組合せて始動すべきと考えています。有人国境離島交付金を活用するタイミングは同法交付金が5年までの継続可能という特徴を生かして、設備増強を段階的に行い、事業拡大を図ることも検討範囲と考えます。若い人!久賀島でどのような起業ができるのか。ぜひ、考えてください。

writer : 「久賀島Life」編集長 斉藤俊幸